警備員虎の巻

~Guardman's bible~

誰でも成長できる

私の警備班に深田さんという隊員がいた。

深田さんは60歳を過ぎていて、そのころ入ったばかりの新米警備員だった。深田さんは歩行者に声もかけられないし、誘導灯も手旗も上手に振れない。もちろん片側交互通行もうまくできなかった。 

深田さんは新任教育を終えた後仕事についたが、あまりのお荷物ぶりに警備班の隊長から見放され、私の警備班にやってきた。

 (さて、どうするかな…)

 私はまず、片側交互通行ができるようにしようと考えた。他ができなくても、片側交互通行が出来れば警備員としての使いでがあるし、深田さんが警備員として生き残る道ができると。

 * * * *

 実際にやってみると、深田さんの片側交互通行には難題がたくさんあった。

 ひとつひとつ解決していくしかないのだけれど、一番の難関は「動作が遅くて間に合わない」ということだった。こちらが合図を出してもなかなか返しの合図が出てこない。車を止める場合もタイミングが遅くなってなかなか止められない。そんなことを繰り返していた。

 重点的に教えたのは実は二つで、

という点だ。60歳を過ぎている深田さんは人よりも動作が遅い。そういう人に「速く動け」と言っても無理な話だ。だが、「(車や合図を)早く見つけて」「早く振り始める」ことはできる。

 これを現場で実践していくにしたがって、だんだんとスムーズに片側交互通行の合図のやりとりができるようになってきた。「頭で覚える」というよりは、「体で覚えた」という感じになってきた。

 「早く見つけて」「早く振り始める」ということも体で覚えてきた。やっていくうちに自分なりのタイミングをつかみはじめた。車を止めるタイミングが遅れて危なくなるシーンも激減した。

 こうなればしめたもので、もう十分に戦力だ。今の深田さんの姿を前の隊長に見せてあげたいくらいだ。

 * * * *

 深田さんが片側交互通行を出来るようになった大きな理由のひとつは、

 「深田さんに学ぶ姿勢があった」

 ということだと思っている。どれだけよい指導しようが、学ぶ姿勢がなければ決して身にはつかない。

 逆に年を取ろうが動作が遅かろうが、学ぶ姿勢があれば体で覚えることはできる。誰でも成長することはできるのだと、私は深田さんから教わったような気がする。

 最後に言っておくと、こうやって記事にまとめてみると簡単にできそうな気がするけれど、実はかなり大変だったんですよ?その証拠に私は深田さんとの片側交互通行中に、誘導灯を二本たたき割りましたから(苦笑)

 

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