警備員虎の巻

~Guardman's bible~

アクロバティックな片側交互通行

あるガス工事の現場で警備をしていると、近くに電気工事の作業班がやってきた。 

二車線の道路で、私たちは片側交互通行を行っていた。電気工事の作業班はちょうどガス工事の作業帯の少し先に車を止め、作業帯を作り始めた。 

ほどなくして警備員が出てきて、片側交互通行を始めた。電気工事の作業帯は交差点付近。その交差点には小柄で少し背中の曲がった、お年を召した警備員が立った。 

通常は交差点絡みで片側交互通行を行う場合、交差点側には片側交互通行の上手な、比較的機敏な警備員を付けるのが普通だ。申し訳ないが、電気工事の交差点に立っている警備員はそうは見えなかった。背中が曲がっているせいだろうか。おっちゃん、というよりじいちゃん、と言ったほうがぴったりくる。そんな警備員だった。 

交差点絡みの片側交互通行では、交差する二つの道路を見なければならない。通常は目の前の一本の道路を、自分の前面(角度にして180度分)が見えればよいが、交差点の場合は自分の側面も加えた270度分見る必要がある。 

それだけ広い視野で見なければいけないため、交互通行の交差点側には通常レスポンスのいい、交互通行がうまい警備員を配置する。背中の曲がったじいちゃん警備員がここでどうするのか、私は注目していた。うちの警備員ではないから、業務としてではなく、私の興味としてだ。 

(さすがに背中が曲がってるから、270度分はなかなか見られないよなあ…) 

私はそう思っていた。こういう場合、普通は死角になる角度90度の部分に背を向けて立ち、体をひねって交差する両方の道路を監視する。背中が曲がっていると、さすがに上半身をうまくひねることができない。スタンスをいろいろ変えながら見ていくしかないだろう。 

すると、背中の曲がったじいちゃん警備員は、時計回りにぐるぐると回りはじめた。おそらくは体をひねることができないので、広く見なければいけない場合にはこうやって見ることにしているのだろう。間違いなく、独特のテクニックだ。 

(本気かよ…そんなことしたら、目がまわっちまうぜ??) 

そう思いながら見ていると、じいちゃん警備員はぐるぐると回りながらも器用に旗を出していて、片側交互通行の形になっていた。ある意味、とてもアクロバティックな片側交互通行だ。 

私にはあんなアクロバティックな片側交互通行は無理だ。もし将来、私の背中が曲がってしまって視野が狭くなったとき、私はあんなことをしなければいけないのだろうか? 

冗談じゃない。背中に寒気が走り、私の背筋は思わずピンと伸びていた。 

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