警備員虎の巻

~Guardman's bible~

朝一番の後進誘導

今日も新しい警備員が私の警備班に助っ人にやってきた。私には新しい警備員が来たときに、まず最初にやってもらうことがひとつある。それが、

 

「朝一番の後進誘導」

 

である。私の警備班では、まず最初に詰所から工事車両を出すことから始まる。この工事車両の後進誘導をやってもらうわけだ。

 

この後進誘導を見れば、その警備員の力量や仕事の取り組み方がなんとなく推し量れる。

 

声が出ているか、立ち位置はどうか、慣れた落ち着きはあるか、旗を振っての誘導のしかたはどうか、道路上の安全確認はどうか、ドライバーさんとコミュニケートできるか。そんなところを観察する。

 

今までもいろんな警備員がいた。声が出ないでオドオドしながら誘導していたり、立ち位置が悪くて車の真後ろに入ってしまったり。技能的な面だけではなくて、まじめに取り組む気があるかないかもそこを観察しているとなんとなく伝わる。やる気なさそうに声も出さずにおざなりにやっているような警備員は、まあ大したことがない。

 

私のところにくる警備員は、まずこれをマジメにやった方がいい。しっかり見させてもらってるからね。

 

* * * *

 

今日やってきた新しい警備員は茅場さんといって身長が150cmくらいしかない、小さな警備員だった。それだけではなくて足も悪く、ぴょこぴょこ少しはねるように歩いていた。周りの警備員の中には茅場さんを知っている人も多いらしく、茅場さんの背の低さをからかう者もいた。

 

私は茅場さんに「朝一番の後進誘導」をお願いし、近くで観察することにした。

 

「オーライ!オーライ!」

 

朝一番でも声は腹から出ている。小さい体全体で音を響かせている、そんな感じがした。旗の振りも小さな体を大きく使い、振りが大きく明確だ。

 

(これは、かなりデキる手合いだな)

 

私はそう感じていた。すると、ふとさっきまで茅場さんの背の低さをからかっていた警備員が目に入った。

 

(アンタ、さっきこの人のことからかってたけど、この人たぶんアンタより仕事できるぜ?)

 

私はそんなことを心の中でつぶやいていた。後進誘導が終わり、工事車両は前進すると道路脇にハザードをつけて停車した。普段はそのまま走り去っていくので、どうかしたのか?と思って見ていると、工事車両のドライバーさんが身を乗り出して後進誘導をした茅場さんに声をかけた。

 

「警備員さん、ありがとうよ。アンタ、今日向こうの工事の担当だろ?乗せてくから、横に乗りな」

 

普段はドライバーさんはそんなことは言わないし、警備員はそこから少し歩いていくのが常だったので、私は少し驚いた。茅場さんは大きく返事をすると、ぴょこぴょこ歩いて工事車両の助手席に乗り込んだ。

 

茅場さんを乗せて走り去る工事車両を見て私は思った。朝一番の後進誘導を見ているのは私だけではない。現場の人みんなが見ているのだと。

 

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