警備員虎の巻

~Guardman's bible~

うなずき警備員

ある現場でのことだ。うちの警備班の有望若手隊員・滝田君に交差点を任せ、私は他の見通しのよい位置から状況を見守っていた。

 

滝田君の誘導を見ていて、あることにハタと気づいた。滝田君の歩行者誘導にはどうにも違和感がある。

 

違和感の正体は滝田君の「うなずき」だ。回数がどうにも多すぎる。誘導は出来ているし、独特の通りのよい声もよく出ているが、「うなずき」があまりにも多すぎる。誘導していて、「そうそう、そちらです」というようなニュアンスを出すためにうなずくことはあるが、それにしてもそこまでうなずきばかりを多用することはあまりない。

 

私は折りを見て滝田君に駆け寄り、真意を聞いてみた。

 

「滝田君、何かさ、誘導みてるとうなずくことがすごく多いんだけど、どうしてなんだろう?」

「えっ、あれはお礼してるつもりなんですけど…」

 

滝田君のうなずきは、どうやらお辞儀をしているつもりだったらしい。

 

「お礼だったら、頭だけ下げるんじゃなくてさ。ほんの少しでいいから腰を折るとお礼に見えるよ」

 

私は滝田君に実演付きでそうアドバイスした。日本語ではお辞儀することを「頭を下げる」とよく言うが、実はほんの少しでいいから「腰を折る」とお礼に見える。バブルヘッド人形のような首から上の動きだけではお礼には見えないものだ。

 

「あっ、わかりました!15度の敬礼ってヤツですね!」

 

滝田君はハッと気づいたような顔つきでそう答えた。自衛隊上がりの滝田君はこういうネタには食いつきがいい。

 

「滝田君、物事なんでもそうなんだけどさ。知識として知ってるだけじゃダメなんだよ。実践してみなくちゃ。お辞儀の仕方だっていろいろあって、それぞれがそういうお礼に見えるように出来てるんだよ」

 

世の中には、知識としてはよく知っていても実践できない人がとても多い。お辞儀ひとつにしても、机上の方法論だけ見るとうすっぺらく見えるけれども、実践してみると効果を体感できる。そういうものだ。

 

このことを知った滝田君のお辞儀は、この後の現場でもすごくよくなった。

 

ちなみにこのブログのイラストも「お辞儀する警備員」のイラストを使わせてもらっている。「路上でお願いし続ける」ことが仕事の警備員にとって、お辞儀はものすごく大事なことだと思っているからだ。

 ◎ちなみにバブルヘッド人形ってこれね。

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