警備員虎の巻

~Guardman's bible~

消費税増税と警備員

今年の4月に消費税率が上がり、世間では多少の混乱があった。

小売店では税込価格と税抜価格が混在し、新税率が厳密にはいつの取引から適用されるかといった問題もあった。

私たちがいる警備員の世界も、消費税増税は無縁のことではなかった。

増税前の道路工事の駆け込み需要で、今年の2月~3月あたりは警備員が不足していた。うちのような会社にも知らない会社から警備員の動員要請がきたり、一時的に警備員の値段も上がったりもした。

値段が上がったとはいえ、私たちの日当にはなんの影響もないんですけどね。

 

* * * *

 

うちの警備班にもしばらく来ていた警備員で、岩本君という若い警備員がいた。

19歳と若い岩本君には問題が多かった。

素直に指示に従わず、遅刻も常習。ヘタをすると現場に来ないこともあった。周囲の先輩警備員とも衝突を繰り返し、気がつくと私の周りの班につくことは全くなくなっていた。

そんな問題児の岩本君にも、消費税の駆け込み需要で今年の2月・3月あたりには仕事があったらしい。

私の周囲につくことは全くなかったので全て噂話だが、よその現場でも遅刻と衝突を繰り返していたらしい。そんな岩本君でも数勘定に入れなければならないほど警備員の仕事はあふれていた。

4月になり、繁忙期はあっという間に終わった。会社では年度が変わり、消費税は上がった。工事が動き出すにはまだ間があり、会社にくる警備員の動員依頼はガクンと減った。

岩本君と仕事をしたという噂も全く聞かなくなった。会社も問題の多い警備員に仕事を頼むことはなくなった。

 

管制の岩本君の名札は、常に寂しく欄外にある。

 

* * * *

 

警備員に限らず、世の中で働く人たちというのは、「仕事に呼ばれる」ものなのだと思っている。

その仕事にふさわしい人が仕事に呼ばれ、仕事が回っていく。仕事に呼ばれるためには、日々の仕事を懸命にやり、周囲の人に評価されなくてはならない。仕事をし、評価され、また仕事に呼ばれ、そして日々成長する。その繰り返しを人は行っている。

「たかが警備員の仕事」

と警備員の中には自分の仕事を卑下する人間も中にはいる。だが、そういう人間に限って懸命に仕事をしてはいないものだ。そういう人たちの言う「たかが警備員の仕事」すら懸命にできない人間が、他のもっといい仕事に呼ばれることがあるんだろうか?

 

そんなことはない。日々の仕事を懸命にやり、成長してこそ次のいい仕事に呼ばれるんだ。

 

私は岩本君にそういうことを教えそびれてしまった。今の岩本くんが、彼にふさわしい仕事に呼ばれることを私は願っている。

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アクロバティックな片側交互通行

あるガス工事の現場で警備をしていると、近くに電気工事の作業班がやってきた。 

二車線の道路で、私たちは片側交互通行を行っていた。電気工事の作業班はちょうどガス工事の作業帯の少し先に車を止め、作業帯を作り始めた。 

ほどなくして警備員が出てきて、片側交互通行を始めた。電気工事の作業帯は交差点付近。その交差点には小柄で少し背中の曲がった、お年を召した警備員が立った。 

通常は交差点絡みで片側交互通行を行う場合、交差点側には片側交互通行の上手な、比較的機敏な警備員を付けるのが普通だ。申し訳ないが、電気工事の交差点に立っている警備員はそうは見えなかった。背中が曲がっているせいだろうか。おっちゃん、というよりじいちゃん、と言ったほうがぴったりくる。そんな警備員だった。 

交差点絡みの片側交互通行では、交差する二つの道路を見なければならない。通常は目の前の一本の道路を、自分の前面(角度にして180度分)が見えればよいが、交差点の場合は自分の側面も加えた270度分見る必要がある。 

それだけ広い視野で見なければいけないため、交互通行の交差点側には通常レスポンスのいい、交互通行がうまい警備員を配置する。背中の曲がったじいちゃん警備員がここでどうするのか、私は注目していた。うちの警備員ではないから、業務としてではなく、私の興味としてだ。 

(さすがに背中が曲がってるから、270度分はなかなか見られないよなあ…) 

私はそう思っていた。こういう場合、普通は死角になる角度90度の部分に背を向けて立ち、体をひねって交差する両方の道路を監視する。背中が曲がっていると、さすがに上半身をうまくひねることができない。スタンスをいろいろ変えながら見ていくしかないだろう。 

すると、背中の曲がったじいちゃん警備員は、時計回りにぐるぐると回りはじめた。おそらくは体をひねることができないので、広く見なければいけない場合にはこうやって見ることにしているのだろう。間違いなく、独特のテクニックだ。 

(本気かよ…そんなことしたら、目がまわっちまうぜ??) 

そう思いながら見ていると、じいちゃん警備員はぐるぐると回りながらも器用に旗を出していて、片側交互通行の形になっていた。ある意味、とてもアクロバティックな片側交互通行だ。 

私にはあんなアクロバティックな片側交互通行は無理だ。もし将来、私の背中が曲がってしまって視野が狭くなったとき、私はあんなことをしなければいけないのだろうか? 

冗談じゃない。背中に寒気が走り、私の背筋は思わずピンと伸びていた。 

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誰でも成長できる

私の警備班に深田さんという隊員がいた。

深田さんは60歳を過ぎていて、そのころ入ったばかりの新米警備員だった。深田さんは歩行者に声もかけられないし、誘導灯も手旗も上手に振れない。もちろん片側交互通行もうまくできなかった。 

深田さんは新任教育を終えた後仕事についたが、あまりのお荷物ぶりに警備班の隊長から見放され、私の警備班にやってきた。

 (さて、どうするかな…)

 私はまず、片側交互通行ができるようにしようと考えた。他ができなくても、片側交互通行が出来れば警備員としての使いでがあるし、深田さんが警備員として生き残る道ができると。

 * * * *

 実際にやってみると、深田さんの片側交互通行には難題がたくさんあった。

 ひとつひとつ解決していくしかないのだけれど、一番の難関は「動作が遅くて間に合わない」ということだった。こちらが合図を出してもなかなか返しの合図が出てこない。車を止める場合もタイミングが遅くなってなかなか止められない。そんなことを繰り返していた。

 重点的に教えたのは実は二つで、

という点だ。60歳を過ぎている深田さんは人よりも動作が遅い。そういう人に「速く動け」と言っても無理な話だ。だが、「(車や合図を)早く見つけて」「早く振り始める」ことはできる。

 これを現場で実践していくにしたがって、だんだんとスムーズに片側交互通行の合図のやりとりができるようになってきた。「頭で覚える」というよりは、「体で覚えた」という感じになってきた。

 「早く見つけて」「早く振り始める」ということも体で覚えてきた。やっていくうちに自分なりのタイミングをつかみはじめた。車を止めるタイミングが遅れて危なくなるシーンも激減した。

 こうなればしめたもので、もう十分に戦力だ。今の深田さんの姿を前の隊長に見せてあげたいくらいだ。

 * * * *

 深田さんが片側交互通行を出来るようになった大きな理由のひとつは、

 「深田さんに学ぶ姿勢があった」

 ということだと思っている。どれだけよい指導しようが、学ぶ姿勢がなければ決して身にはつかない。

 逆に年を取ろうが動作が遅かろうが、学ぶ姿勢があれば体で覚えることはできる。誰でも成長することはできるのだと、私は深田さんから教わったような気がする。

 最後に言っておくと、こうやって記事にまとめてみると簡単にできそうな気がするけれど、実はかなり大変だったんですよ?その証拠に私は深田さんとの片側交互通行中に、誘導灯を二本たたき割りましたから(苦笑)

 

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朝一番の後進誘導

今日も新しい警備員が私の警備班に助っ人にやってきた。私には新しい警備員が来たときに、まず最初にやってもらうことがひとつある。それが、

 

「朝一番の後進誘導」

 

である。私の警備班では、まず最初に詰所から工事車両を出すことから始まる。この工事車両の後進誘導をやってもらうわけだ。

 

この後進誘導を見れば、その警備員の力量や仕事の取り組み方がなんとなく推し量れる。

 

声が出ているか、立ち位置はどうか、慣れた落ち着きはあるか、旗を振っての誘導のしかたはどうか、道路上の安全確認はどうか、ドライバーさんとコミュニケートできるか。そんなところを観察する。

 

今までもいろんな警備員がいた。声が出ないでオドオドしながら誘導していたり、立ち位置が悪くて車の真後ろに入ってしまったり。技能的な面だけではなくて、まじめに取り組む気があるかないかもそこを観察しているとなんとなく伝わる。やる気なさそうに声も出さずにおざなりにやっているような警備員は、まあ大したことがない。

 

私のところにくる警備員は、まずこれをマジメにやった方がいい。しっかり見させてもらってるからね。

 

* * * *

 

今日やってきた新しい警備員は茅場さんといって身長が150cmくらいしかない、小さな警備員だった。それだけではなくて足も悪く、ぴょこぴょこ少しはねるように歩いていた。周りの警備員の中には茅場さんを知っている人も多いらしく、茅場さんの背の低さをからかう者もいた。

 

私は茅場さんに「朝一番の後進誘導」をお願いし、近くで観察することにした。

 

「オーライ!オーライ!」

 

朝一番でも声は腹から出ている。小さい体全体で音を響かせている、そんな感じがした。旗の振りも小さな体を大きく使い、振りが大きく明確だ。

 

(これは、かなりデキる手合いだな)

 

私はそう感じていた。すると、ふとさっきまで茅場さんの背の低さをからかっていた警備員が目に入った。

 

(アンタ、さっきこの人のことからかってたけど、この人たぶんアンタより仕事できるぜ?)

 

私はそんなことを心の中でつぶやいていた。後進誘導が終わり、工事車両は前進すると道路脇にハザードをつけて停車した。普段はそのまま走り去っていくので、どうかしたのか?と思って見ていると、工事車両のドライバーさんが身を乗り出して後進誘導をした茅場さんに声をかけた。

 

「警備員さん、ありがとうよ。アンタ、今日向こうの工事の担当だろ?乗せてくから、横に乗りな」

 

普段はドライバーさんはそんなことは言わないし、警備員はそこから少し歩いていくのが常だったので、私は少し驚いた。茅場さんは大きく返事をすると、ぴょこぴょこ歩いて工事車両の助手席に乗り込んだ。

 

茅場さんを乗せて走り去る工事車両を見て私は思った。朝一番の後進誘導を見ているのは私だけではない。現場の人みんなが見ているのだと。

 

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うなずき警備員

ある現場でのことだ。うちの警備班の有望若手隊員・滝田君に交差点を任せ、私は他の見通しのよい位置から状況を見守っていた。

 

滝田君の誘導を見ていて、あることにハタと気づいた。滝田君の歩行者誘導にはどうにも違和感がある。

 

違和感の正体は滝田君の「うなずき」だ。回数がどうにも多すぎる。誘導は出来ているし、独特の通りのよい声もよく出ているが、「うなずき」があまりにも多すぎる。誘導していて、「そうそう、そちらです」というようなニュアンスを出すためにうなずくことはあるが、それにしてもそこまでうなずきばかりを多用することはあまりない。

 

私は折りを見て滝田君に駆け寄り、真意を聞いてみた。

 

「滝田君、何かさ、誘導みてるとうなずくことがすごく多いんだけど、どうしてなんだろう?」

「えっ、あれはお礼してるつもりなんですけど…」

 

滝田君のうなずきは、どうやらお辞儀をしているつもりだったらしい。

 

「お礼だったら、頭だけ下げるんじゃなくてさ。ほんの少しでいいから腰を折るとお礼に見えるよ」

 

私は滝田君に実演付きでそうアドバイスした。日本語ではお辞儀することを「頭を下げる」とよく言うが、実はほんの少しでいいから「腰を折る」とお礼に見える。バブルヘッド人形のような首から上の動きだけではお礼には見えないものだ。

 

「あっ、わかりました!15度の敬礼ってヤツですね!」

 

滝田君はハッと気づいたような顔つきでそう答えた。自衛隊上がりの滝田君はこういうネタには食いつきがいい。

 

「滝田君、物事なんでもそうなんだけどさ。知識として知ってるだけじゃダメなんだよ。実践してみなくちゃ。お辞儀の仕方だっていろいろあって、それぞれがそういうお礼に見えるように出来てるんだよ」

 

世の中には、知識としてはよく知っていても実践できない人がとても多い。お辞儀ひとつにしても、机上の方法論だけ見るとうすっぺらく見えるけれども、実践してみると効果を体感できる。そういうものだ。

 

このことを知った滝田君のお辞儀は、この後の現場でもすごくよくなった。

 

ちなみにこのブログのイラストも「お辞儀する警備員」のイラストを使わせてもらっている。「路上でお願いし続ける」ことが仕事の警備員にとって、お辞儀はものすごく大事なことだと思っているからだ。

 ◎ちなみにバブルヘッド人形ってこれね。

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ファンタスティックに声をかけろ

交通誘導警備という仕事は、見方によってはこうもとれる。

 

「通りすがりの見知らぬ人たちに声をかけ、お願いし続ける仕事」

 

実は私は自分の仕事をこういうものだと思っている。

 

何も歩行者誘導に限った話ではなくて、車でも同じことだ。車を運転しているのは人間で、その人間に合図を送り、お願いし続けている。

 

見知らぬ人にいきなり声をかけるわけだから、当然だけれどそれなりの礼儀というものがある。

 

例えば、何の前振りもなく、いきなり「どうぞ」なんて声をかけるような誘導をする人もいるが、それだとお世辞にも礼儀正しいとは言いがたい。

 

基本的にまずはあいさつと御礼から入る。朝なら「おはようございます」と声をかけて頭を下げる。ここで大事なのは顔と態度だ。仏頂面で尊大な態度でやっても意味はない。

 

「あなた方の安全を守るためにお声がけしていますよ」

 

というような、さわやかな笑顔と声色、動作が大事だ。

 

と、ここまで書いて気づいたのだが、これって何のことはない、コンビニや飲食店などで聞く

 

「いらっしゃいませ、こんにちは」

 

と言う声がけと何も変わらない。コンビニあたりだとなんの感情もこもっていないマニュアルどおりのあいさつだけをされることがよくあるが、それでは声をかけられた方は何の感情も生じない。

 

コンビニや飲食店とわれわれの違うところは、こちらは間に金銭も商品もなく、ただただ「お願いする立場」にあるってところだ。私たちと通りすがりの通行人は五分の取引をやっているわけでは決してないはずだ。

 

そういうことから考えても、少なくともコンビニで聞く「いらっしゃいませ、こんにちは」よりはファンタスティックな声がけをすべきなんじゃないだろうか。

 

* * * *

 

以前一緒に「ヨシさん」という警備員と仕事をしたことがある。

 

企業の引越しの警備で、ヨシさんとオレはオフィス街でひたすら歩行者を誘導していた。

 

ヨシさんはお人柄は温厚でいい人なのだが、なんとも恥ずかしがり屋で声が本当に出ない。「こんにちは」の挨拶もなにもなくボソボソとつぶやくようにしゃべり、動作もなく、固まったままだ。これではうまくいくはずがない。何度も通行人に入れてはいけないところに入られてしまっていた。

 

(困ったなあ…)

 

オレはそこで一計を案じた。名づけて「かわいい娘には声を掛けろ作戦」だ。ヨシさんてのは恥ずかしがり屋だが、無類の女好きでキャバクラが大好きだ。私はこれを利用しようと考えた。

 

私は歩道の入り口付近にいるヨシさんに歩み寄った。

 

「ヨシさん、もうみんなに声かけろとは言わない。キレイなおねえさん来たら、しっかり声かけよう。『こんにちは、こちらへどうぞ』って笑顔で誘導しようや」

 

オレは身振り手振りで実際にやって教えてみた。

 

「了解!」

 

ヨシさんは敬礼すると急に元気になった。鼻息も荒く、すっかり声をかける気になったようだ。キレイなおねえさん限定ではあるが。

 

しばらくすると、さすがはオフィス街でベージュ系のスーツを着込んだキレイなOL風のおねえさんが通りかかった。佐藤江梨子に似た感じで黒髪ストレートがお似合いだ。

 

(きたきた)

 

ヨシさんがいつ声をかけるかと見守る。佐藤江梨子がどんどんと近づいてくる。そしてついにヨシさんの横を通り過ぎてしまった。なぜかヨシさんは相変わらず固まったままだった。いや、むしろ今まで以上に固まっていたような気がした。

 

「ヨシさん、今の声かけなきゃダメでしょ!」

 

ヨシさんのところに駆け寄って問い詰めると、ヨシさんはこう答えた。

 

「ゴメン、ちょっとキレイすぎてビビっちゃった」

 

コ、コノヤロウ…

  

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微差

 

同僚に千里さんという警備員がいる。私よりもかなり年上のおっちゃん警備員だが、頭がよくて判断がよく、アイデアもよく出る。経験から積み重ねた誘導技術も持っていて、私も現場で何度も助けてもらったことがある、仲間内から見てもとても優秀な警備員だ。

 

けれども、この千里さんの顧客や会社の評価というのは決して高くない。これはなぜなんだろうか?

 

おそらく、警備員にとって大事なのは、誘導技術や正確な判断だけじゃないってことだ。

 

* * * *

 

千里さんは優秀な警備員だが、見てくれはあまりよくない。

 

薄めの白髪頭で背も低く、少し猫背気味にガニ股で歩く。私がいるここは東京だが、千里さんは早口の関西弁でしゃべくる。誘導灯や旗の振りも間違ってはいないがバタくさい。「手をまっすぐ上に上げる」とか「手を真横に伸ばす」というようなきれいさはない。

 

ひとつひとつを取ってみれば、警備員にとってさして重要なことではないかもしれない。

 

だが、考えてみて欲しい。

 

背の高いイケメンで立ち姿が美しく、スッスッときれいに歩く。ゆっくりわかりやすく話し、きれいに手旗や誘導灯を振って誘導する警備員と千里さんではどちらが優秀に見えるかは明らかだ。

 

千里さんは警備員としての基本性能は高いが、こういう付帯的な部分ですごく損をしている。

 

警備員は常に見られている。顧客から、道行く人から見られている。動作や言動のひとつひとつが評価対象だと思っていいだろう。実はこういう普段の言動の本当に「微妙な差」が実は警備員の評価を決定付けている。

 

* * * *

 

警備会社には現場で働く警備員を巡察し指導する指導員がいる。

 

時々現場に来ては

 

「装備はきちんとしているか?」

「清潔感のある服装にしているか?」

「正しい動きで誘導しているか?」

 

というようなところを確認し指導していく。指導員というのはうるさ型が多くて、ほとんどの現場の警備員はうっとおしく思っていたりする。うっとおしがられるような細かいところを指導していくのが指導員の仕事でもあるからだ。

 

けれども、先にあげたような「微差」を積み重ねることがよりよい警備員への道でもある。

 

指導されたことを「大したことじゃない」と思っても、そういうことを修正していくと微差が大差になっていき、顧客や会社の評価につながっていく。

 

指導されたこと・自分できづいたことを、たとえ小さなことでもたくさん修正していくことが大事なんだよね。

 

まあ、さすがに見てくれが悪いから整形するってのはやりすぎだとは思うけれど。

 

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